韓国超大ヒットの秀吉朝鮮出兵映画『バトル・オーシャン／海上決戦』を見た

文禄・慶長の役については詳しくないのだが（ちょっと調べてみると凄い大戦争だね。この頃の日本って成人男子全員戦士だったのだろうか？　血気盛んすぎる）、鳴梁海戦という海戦で日本軍に勝利した朝鮮の英雄・李舜臣を主人公にした歴史大作だ。 英語タイトルは「The Admiral : Roaring Currents」 悪役は映画の華だと思っているので、日本人が海外作品で悪役として描かれていると、愛国者として見たくてたまらなくなる。 基本的には世界の中では無視されがちというか誰も知らない日本なので「いやあ～、日本人を映画に取り上げていただいてありがとうございます。光栄です。」という気持ちだ。 色々見てきたけれど、日本人悪役映画の最候補はやはり『ブラック・レイン』ではないだろうか？ あの冷酷でエレガントでスタイリッシュな松田優作はまさに悪の華だった。 封切り当時なぜか松田優作を知らなかった中学生のおれはハリウッド俳優たちや高倉健を完全に喰ってしまっているこの日本人は誰なんや？！とスゴイ衝撃を受けたものだった。 さて、そんな観点から言うとこの『鳴梁（명량）』は期待ハズレの残念な作品だ。 なぜなら日本人俳優が一人も出ていないからだ（いや、一人くらいは出ていたかも？　エキストラの中にもいたかも）。 秀吉軍の登場シーンが三分の一以上あり、武士たちは日本語で話すので日本語の台詞が多いのに日本人俳優が一人も出ていないとどんな惨状になるかお分かりだろうか？ 台本の台詞は日本人が聞いても違和感のない時代劇言葉なのに、日本軍の主要な武将を演じる韓国人俳優たちの日本語の発音がヒドすぎてズッコけるレベル。 「～でゴジャル」 「～でゴジャイマス。」 「～でゴジャリマスル」 「～でゴジャイマスカ」 …お前らは武士じゃなくて公家か？ どうもザジズゼゾの発音が韓国人はできないらしい。 そして、不幸なことに時代劇言葉はザジズゼゾの音が多い。 日本人でも聞き取れない日本語なので、英語字幕がないと意味が分からないレベル。 リアルな武士のルックにするために、ちゃんと頭を剃って髷を結っているのに（海外から見ると、日本の時代劇のカツラは強烈な違和感を感じるらしい）、なぜ日本人俳優を雇って日本語もキチンとリアルにしなかったのだろうか？ 誰も出る人がいないかったのか？ 海戦のスケールは日本映画だと不可能なレベルなのでこういう粗が残念だ。 この映画の最大の悪役・脇坂安治を演じる韓国人俳優。 ちょっとダースベイダーっぽい。 ダークな登場シーンを初め、他の日本軍の武将たちにも危険人物扱いされているなど、映画における悪役のデモンストレーションとしては合格。 しかし、日本語は不自由なので喋らなければイイ男だ。 メキシコ麻薬カルテル並みの残虐行為も。狩った首級の鼻を削いで朝鮮の村に送りつける。 こいつはヤバいという分かりやすい自己紹介だ。 手下には狙撃の名手も。綺麗なお目目をしている。 ４００～５００ｍの距離を狙撃していたけど、火縄銃ってそんな威力あったっけ？ 日本の時代劇にはない鉄砲や大砲をメインとした合戦が描かれるので、そういう意味ではとても新鮮。 実際も刀や槍を使った白兵戦は戦闘の〆で行われたらしく、もっぱら撃ち合いがメインだったようだ。 日本軍の一斉射撃で蜂の巣になる朝鮮船の描写がカッコイイ。 メインの海戦もVFXや撮影、エキストラなどはハイクオリティだが、その荒唐無稽さは『300 〈スリーハンドレッド〉 〜帝国の進撃〜』レベル。 手漕ぎ船なのに、その速度はモーターボート並。 朝鮮軍１２隻VS日本軍３３０隻とコピーにあるが、実際は日本軍の大群を見てビビリ、朝鮮軍は大将の李舜臣が乗る船を残して、残らず逃走するため（ヒデーな！！　敵前逃亡は死刑だぞ！！）、１隻VS日本軍３３０隻になる。 そ、そんな馬鹿な？！ 勝てるわけないだろ！ それでも余裕の英雄・李舜臣。 実は日本軍も３３０隻全船が戦うわけではなくて、先鋒を担う武将・脇坂安治の率いる軍船数十隻のみ。 脇坂安治もアホなのか、小出しの正面突撃を繰り返して自軍をすり減らし、最後は自ら李舜臣の船に切り込んで、首をはねられる。 よ、弱い…。 あの登場シーンは一体なんだったのか？ 暴れん坊の脇坂安治を討ち取られた日本軍は英雄・李舜臣には勝てないと悟り、大群を率いて退却するのだった。 え？ なんで？ 数で圧せばええやん…。 一番最後に登場する朝鮮軍の最終兵器・亀甲船。サウンドエフェクト含めてほとんど怪獣。口から大砲が出る。 トンチキ戦争映画の『マイ・ウェイ』ほどヒドくはないかもしれないけど、まあ同じレベルのトンチキ映画でした。 期待していただけに残念。 しかし、韓国や中国で作られているこういった抗日映画の作品としてのルック、クオリティはハリウッド映画に匹敵するクオリティなので、日本映画もこのレベルにたどり着かないとプロパガンダには負けるのではないだろうか。 現にこの『鳴梁』はアメリカなど色々な国でかなり見られているらしい。 日本人から見て荒唐無稽と文句言ったって他の国の人はそんなの分からないからな。