もっとドイツ戦車を出せ、この野郎！！『フューリー』

もっとドイツ戦車を出せ、この野郎！！


そもそも、この映画を見に来る人はブラッド・ピットの刈り上げヘアスタイルを見たい女子か、ドイツ戦車見たいオタクの二種類しかいないのに、ドイツ戦車が全然出てこない！
映画館は男率１００％で、その中でも軍オタっぽいのが８５％くらいいた。
おそらく全員がタミヤのドイツ戦車プラモデルを作ったことがありそうな顔をしていた。
　
とにかく丸っこいシャーマン戦車なんて他のアメリカ製戦争映画でいくらでも出てくるし、そんなの見たい需要はないんだよ！


折角、戦争映画史上において稀有な実際の物に限りなく近いタイガー戦車の勇姿が拝めるのに、あんなシャーマン戦車に簡単に倒されるなんて・・・。
タイガー戦車の８８mm砲を４～５ｍの超至近距離から側面も含めて２発食らっても破壊されないシャーマン戦車ってどんな超改造が施されているんだ？
ふざけやがって・・・。
あのタイガー戦車も折角距離とった不意打ちでM４戦車仕留めているのにわざわざM4に向かって前進して近づいて来るって、バカか？
まあ、もうアメリカの戦争映画で出てくるドイツ軍はいつも弱いから仕方がないんだが、この映画はあまりにもヒドすぎる。
M４戦車一台程度が無双し過ぎ。ランボーより図々しい奴だ。

ラストの戦闘が猛烈にヒドかった。
米兵５人対武装SS３００人とか謳ってるアレだ。
その対決の前にこのM4戦車が地雷を踏んでキャタピラーが大破し擱座するのだが、そのままこの戦車を固定砲台として使い、たった５人でその武装SS３００人を迎え撃ち、あっさり３００人を皆殺しにしてしまう。
まあ、あっさりと言っても４人死ぬんだが、４人の犠牲で３００人殺したんならコスパ的には最高だろう。
動けない戦車に立て籠る人５人に負けるドイツ兵３００人・・・。
MG42やパンツァーファウスト、狙撃銃にMP44、手榴弾多数を装備している３００人が全滅・・・。
この３００人を俺に操作させてくれれば・・・。
今、「Company of Heroes ２」というゲームでドイツ軍を操るのにハマっているので、こんな戦いは俺なら楽勝なのに・・・。

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というか動くキングタイガーが現存するんだし、キングタイガーを最終ボスとして出すべきだった。タイガーは途中で出てくる中ボスだ。


その上、最後に生き残った主人公が戦車に隠れているのを武装SSの一人が見つけるのだが、なぜか見逃す。
何かヒューマニティを演出したかったのか知らないが（やたら戦争の後に深刻な顔をさせて、悲壮な音楽を流させる癖があるので間違いないだろう）、それ違わないか？
仲間のSS隊員に失礼だろう？米兵を助けるのが正義みたいに演出されても敗戦国民としては「はあ？」としか思えない。

主人公たち米兵５人がまた何か嫌な奴らで戦場でのタフさを履き違えた行為ばかりしていて、ひたすら不快である。
占領したドイツの田舎町で女性二人がいる住居を占拠してネチネチいたぶる。このシーンが異常に長く、体感時間で１時間以上に感じる。比較的教養のある主人公の新兵がピアノを弾くとドイツ娘は一瞬で惚れてベッドイン。都合がいいなあ。敗戦国民は屈辱的だ。ブラピも偉そうに人の家に勝手に入って寛いでいるくせに良い人ぶって部下に説教たれたりする。さっさと戦車に乗って戦いに行け！バカ者どもめ！
降伏したドイツ兵を陰湿に殺すシーン。不快である。戦記物などを読むとこういう戦争犯罪的な行為を犯すのは激戦が終った後に来る戦闘をあまり体験していない後続兵が多いのだが。

勇敢な兵士ほど勇敢な敵には敬意を払うはずだ。

まあ、良かったところはリアルな戦車や兵器と軍装だな。
あと、お約束演出だけど隊長のブラッド・ピットが鹵獲したドイツ軍の突撃銃MP44を使っているところも割りと良かった。
この手は『戦争のはらわた』のPPSh-41を持つシュタイナー軍曹から始まり、最近だと日本の『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』でも唐沢寿明が米軍のトンプソン軽機関銃を持っていた。そういえば先日書いた『ホワイトタイガー』でもソ連軍の隊長がドイツ軍のMP38を使っていたな。こういう敵の鹵獲武器を持ってるとベテラン兵士っぽく見えるのでよく使われる演出だ。


ストーリーとキャラクターは最低である。
監督と脚本家を別の誰かに変えるべきだった。
しかし、口直しに見れる第二次世界大戦が舞台の良い戦車映画もない（『バルジ大作戦』も『パットン大戦車軍団』も映画としては良いが、ドイツ戦車がトンチキ過ぎて、今の目ではもう見れない）ので、小林源文の漫画と宮﨑駿の漫画「泥まみれの虎」を読んで不貞寝することにする。