ツイ・ハーク最新作、中国人民解放軍のハチャメチャ武侠映画『タイガー・マウンテン 雪原の死闘』
- 2015/05/07
- 18:55
以前にメチャクチャな予告編とポスタービジュアルを見て、是非これは見なければと思っていた作品。ブログ記事にも書いた。
ツイ・ハーク新作「The Taking of Tiger Mountain」予告編

ストーリーは1946年の中国が舞台。人民解放軍の英雄たちが、中国辺境の日本軍が残していった山岳要塞に篭もる山賊たちを退治する話。どうも実話(!)がベースのようだ。京劇にもなっているらしい。
出だしはなぜか現代のニューヨーク。NY暮らしのチャラチャラした中国人の若者たちが年越しパーティーをしている。
その内の一人が中国のお祖母ちゃんの家に里帰りすることになり、車中で回想みたいな何かで舞台は1946年に。「変わった作りだなあ、何か意味があるのだろうか?」と不安に…。これは最後に意味が分かる。


山賊たちに襲われている村を中国人民解放軍が助ける。
山賊はドイツ軍(蒋介石軍から鹵獲したのかな)や日本軍の武器を使用。

人民解放軍はソビエト製の武器。

劇中出てくるパンツアーシュレックもどきを構えるツイ・ハーク。

山田孝之ソックリの人が虎と戦ったりもする(…実話?)。この虎のCGの動きが妙にリアルだった


乞食みたいな野生児も。

アラーキーみたいなヘアスタイルの山賊ボスと中ボス八人衆(もちろんそれぞれに特技が)。「あずみ」によくあるパターン。

で、何だかんだがあって(最後の戦いまでは結構会話が多くて、ツイ・ハーク作品にしては割りとおとなしめ)人民解放軍は山賊の砦にカチコミ。山賊から奪った日本軍の軽戦車で要塞を一つ破壊する(実話…?!)

山賊のボスを後ろからパンパンパンと撃ち、あっさり射殺。あれ?ツイ・ハーク作品なのにこのラストバトルのアッサリ感はなんだろうか? 油も塩分も全然足りないぞ!と、ここで疑問に思ったが後ほど理由が判明。

山賊のボスに拐われていたお母さんと野生児が再会。めでたしめでたし。「この子の世代では戦争は起こらないだろう」なんて言っちゃってるけど戦争も起きるし、もっと恐怖の「大躍進政策」と「文化大革命」が起きるよ…。

そして、また現代に。孫が久しぶりに帰ってくるのでお祖母ちゃんがごちそうを作ってくれて待っていた。
それにしても料理が多すぎないか?


何と死んでいった人民解放軍の英雄たちがゾロゾロ出てきた! なんだこれは?! マジック・リアリズム?
そして、この現代中国青年は実はあの野生児の孫だったのだ! …感動した。ケン・ローチの『大地と自由』をちょっと思い出した。
野生児 「元気にやっているか? たまにはお祖母ちゃんに会いに帰ってくるんだぞ」
孫 「はい!」

孫 「でも、ぼくの考えたラストバトルはこういうのなんだよ」とまた回想に。…え?

ここからツイ・ハーク印の飛行機を使ったド派手なラストバトルが! これは笑うしかない凄まじい戦いだった。





派手に死ぬボス。最後まで矜持を保った立派なボスだった。山賊というよりも軍閥と呼んだほうがいいね。




このボスは中国では人気があるのか精巧なフィギュアまでリリースされている。

ラストバトル妄想が終わり、満足そうな青年の顔。

でも、こんなのアリなんだろうか…? 最初からこれを最後の戦いとして入れておけばいいのに。一応実話がベースだから、派手すぎると当局に検閲された苦肉の策なのだろうか? おそらくそうなのだろう。こんな変な構成は初めて見たよ。むしろこんな描き方ができるなんて映画ってとても自由なものなんだと認識できた。
ニコニコ笑う中国人民解放軍の英雄たち。彼らの戦いと死があって、現代中国青年が平和に暮らせるのだ、というプロパガンダが入って終劇。いやあ、でも野生児があの青年のお祖父ちゃんだったというお話はありきたりだけど感動した。プロパガンダが日本鬼子にも届いたよ!

ツイ・ハークということで香港製なので平面が広がる大陸映画とは違い、やはり上下の運動や地下などが出てきた。これらの要素は塩田明彦監督が「映画の生体解剖X映画術: 何かがそこに降りてくる」で香港映画について指摘していた通りである。
中国映画スゴすぎる。これは他の国では見られない作劇だ。異文化が大好きなので、アメリカともヨーロッパとも日本とも違うこの中国映画文化に最近は注目している。日本にもどんどん中国映画が入ってきて欲しいのだけれど、あまり紹介されないのが残念だ。異文化だけれど、異国でヨーロッパ料理やアメリカン・ジャンクフードに飽き飽きした時に出会う中華料理の安心感に似た馴染み深いところもある。山賊同士が仁義を切るところや盃を交わすところはヤクザ映画まんまだった。
ツイ・ハーク新作「The Taking of Tiger Mountain」予告編

ストーリーは1946年の中国が舞台。人民解放軍の英雄たちが、中国辺境の日本軍が残していった山岳要塞に篭もる山賊たちを退治する話。どうも実話(!)がベースのようだ。京劇にもなっているらしい。
出だしはなぜか現代のニューヨーク。NY暮らしのチャラチャラした中国人の若者たちが年越しパーティーをしている。
その内の一人が中国のお祖母ちゃんの家に里帰りすることになり、車中で回想みたいな何かで舞台は1946年に。「変わった作りだなあ、何か意味があるのだろうか?」と不安に…。これは最後に意味が分かる。


山賊たちに襲われている村を中国人民解放軍が助ける。
山賊はドイツ軍(蒋介石軍から鹵獲したのかな)や日本軍の武器を使用。

人民解放軍はソビエト製の武器。

劇中出てくるパンツアーシュレックもどきを構えるツイ・ハーク。

山田孝之ソックリの人が虎と戦ったりもする(…実話?)。この虎のCGの動きが妙にリアルだった


乞食みたいな野生児も。

アラーキーみたいなヘアスタイルの山賊ボスと中ボス八人衆(もちろんそれぞれに特技が)。「あずみ」によくあるパターン。

で、何だかんだがあって(最後の戦いまでは結構会話が多くて、ツイ・ハーク作品にしては割りとおとなしめ)人民解放軍は山賊の砦にカチコミ。山賊から奪った日本軍の軽戦車で要塞を一つ破壊する(実話…?!)

山賊のボスを後ろからパンパンパンと撃ち、あっさり射殺。あれ?ツイ・ハーク作品なのにこのラストバトルのアッサリ感はなんだろうか? 油も塩分も全然足りないぞ!と、ここで疑問に思ったが後ほど理由が判明。

山賊のボスに拐われていたお母さんと野生児が再会。めでたしめでたし。「この子の世代では戦争は起こらないだろう」なんて言っちゃってるけど戦争も起きるし、もっと恐怖の「大躍進政策」と「文化大革命」が起きるよ…。

そして、また現代に。孫が久しぶりに帰ってくるのでお祖母ちゃんがごちそうを作ってくれて待っていた。
それにしても料理が多すぎないか?


何と死んでいった人民解放軍の英雄たちがゾロゾロ出てきた! なんだこれは?! マジック・リアリズム?
そして、この現代中国青年は実はあの野生児の孫だったのだ! …感動した。ケン・ローチの『大地と自由』をちょっと思い出した。
野生児 「元気にやっているか? たまにはお祖母ちゃんに会いに帰ってくるんだぞ」
孫 「はい!」

孫 「でも、ぼくの考えたラストバトルはこういうのなんだよ」とまた回想に。…え?

ここからツイ・ハーク印の飛行機を使ったド派手なラストバトルが! これは笑うしかない凄まじい戦いだった。





派手に死ぬボス。最後まで矜持を保った立派なボスだった。山賊というよりも軍閥と呼んだほうがいいね。




このボスは中国では人気があるのか精巧なフィギュアまでリリースされている。

ラストバトル妄想が終わり、満足そうな青年の顔。

でも、こんなのアリなんだろうか…? 最初からこれを最後の戦いとして入れておけばいいのに。一応実話がベースだから、派手すぎると当局に検閲された苦肉の策なのだろうか? おそらくそうなのだろう。こんな変な構成は初めて見たよ。むしろこんな描き方ができるなんて映画ってとても自由なものなんだと認識できた。
ニコニコ笑う中国人民解放軍の英雄たち。彼らの戦いと死があって、現代中国青年が平和に暮らせるのだ、というプロパガンダが入って終劇。いやあ、でも野生児があの青年のお祖父ちゃんだったというお話はありきたりだけど感動した。プロパガンダが日本鬼子にも届いたよ!

ツイ・ハークということで香港製なので平面が広がる大陸映画とは違い、やはり上下の運動や地下などが出てきた。これらの要素は塩田明彦監督が「映画の生体解剖X映画術: 何かがそこに降りてくる」で香港映画について指摘していた通りである。
中国映画スゴすぎる。これは他の国では見られない作劇だ。異文化が大好きなので、アメリカともヨーロッパとも日本とも違うこの中国映画文化に最近は注目している。日本にもどんどん中国映画が入ってきて欲しいのだけれど、あまり紹介されないのが残念だ。異文化だけれど、異国でヨーロッパ料理やアメリカン・ジャンクフードに飽き飽きした時に出会う中華料理の安心感に似た馴染み深いところもある。山賊同士が仁義を切るところや盃を交わすところはヤクザ映画まんまだった。
カナザワ映画祭 関連書籍