みんなで楽しめる安定コメディ 『龍三と七人の子分たち』
- 2015/04/28
- 16:15
北野映画の中でコメディとはっきりジャンル分けできるのは、怪作『みんな~やってるか!』(この作品だけ、名義がビートたけしなのが意味深)以来なのでは?

地元シネコンでは老若男女で客席が六割程度埋まり(いつもガラガラなことが多いので、これはスゴい)、笑いが客席からバンバン飛び出して、非常に受けていた。これは松本人志映画では見られなかった現象だ(あの時、『大日本人』を上映する劇場は「あれ…笑いに来たのに全然笑えない…」という困惑の空気が場を漂っていた。そして、作品を重ねるごとに更に悪くなっていくとは…)。最初映画が始まる前は若い女の子たちや、オバサンたち、オジーチャンたち、オバーチャンたちが茶の間みたいな感覚で普通にオシャベリしまくっているので、ワイルドだなあ…(タクシードライバー状態のシネフィルではないので、おれはそんなことでは怒らない)と思っていると、ドッカンドッカン要所要所で笑って反応がとても良いので一緒に見ていて非常に楽しかった。
実際、安定して笑えるシーンが多く楽しめる。この感じは60~70年代の日本の純粋娯楽映画を見ている感覚に近いかも(時事問題を絡めた批評性のある笑いも往年の東映映画などを思い起こさせる)。それほど才気走った斬新なお笑いではないのだけれど、ワハハハハと安定して笑えるあの安心感。『みんな~やってるか!』では無かった笑いだ。『みんな~やってるか!』は当時、友達にたけしの映画はすごいんだよとノーガキ垂れて一緒に見て、大変気まずくなったのを覚えている。花くまゆうさくさんの映画評論集「青いオトコの汁」によれば、あの作品は何度も見返すごとに発見があり、面白くなっていくようだ。これは他の北野作品でも見られる特徴なので、いつか再見したいと思いながら、未だ果たせずにいる。
『ソナチネ」までの作品に散りばめられたブチキレまくった先鋭的なギャグシーンは(『みんな~やってるか!』はおれが未熟で理解できなかったので判断は保留で)、『キッズ・リターン』以降の作品では鳴りを潜め、キレの悪いギャグシーン(妙に間延びした編集)が続いたが、それらよりも『龍三と七人の子分たち』はテンポが早くなっており、安心して笑える。
この雰囲気のコメディ映画だと人は死なないだろうなあと思っていると、ヒドく残酷な形で訪れる死もある。そして、その死も次のギャグシーンに活かす秀逸さ。ラインを踏み越えないでちゃんとセーブする当たりが貫禄だ。こういう職人ぽさは好き。散々踏み越えてきた人だけが出せる境地。ちょっと違うかもしれないけど、デビッド・クローネンバーグの出し惜しみ感も大人の貫禄で好き。
『キッズ・リターン』の妙に居心地の良さそうな中華屋や居酒屋のシーンは何度見ても面白いシーンだけど、今回の作品では蕎麦屋に焼き鳥屋に居酒屋にと、あの独特の北野食堂ワールドが楽しめる。あの雰囲気いいよなあ。あれは一体何なのだろうか? 何度見ても飽きない。

座頭市を愛してるんだなあ…。

主人公たちと対立する関東連合ならぬ京阪連合という半グレ集団がいまいちキャラクターとして、掘り下げられていないのが残念。服装含めてヤクザとどう違うの?としか思えない。なんか構成員の年齢も幅が広すぎて半グレに見えない。この辺は振り込め詐欺集団をテーマとするノンフィクション作家の鈴木大介にでも取材すればよかったのではないだろうか。この無法地帯FC2ブログを運営している連中も半グレなので、そいつらのナリを見て参考にしても良かったかも。

コメディとはいえ、暴力描写は相変わらずで、近藤正臣が半グレの奴らをためらわずに刺すシーンは流石。そうなんだよね、人ぶっ刺したり、撃ったりするときは問答無用だよね(『ブルーリベンジ』は猛省するように)。この辺は高倉健(北九州出身)も身体に刻んでいて、今回のこの作品で出てくれてたら最高だったと…。内田裕也さんも出て欲しかったなあ(お名前の言及はある)…。
地元のシネコンでは映画の前に必ずパチンコ屋のCMというか社会貢献プロパガンダ映像みたいのが流れて、こちらのHPを100から20くらい毎回奪ってくれるのだが、今回もヒドいのが上映されていて、パチンコに入ったリクルートスーツの新人がパチンコは「そういう」イメージではないみたいなゴミクズ映像なのだけれど、『龍三と七人の子分たち』の最初のシーンがクズたちがパチンコ屋でもめるシーンだったので、偶然の皮肉に受けまくった。パチンコはパチンコだろうが、なーにが、「地域貢献」だ? 治安悪くしてんだろコラ。 尼崎の監禁鬼ババアも手下をパチンコ屋でスカウトしてたんだぞ? 自覚しろや。 つーかまあパチンコ屋はいいとしても、映画の前にあのCMはやめてください。お願いします! とても疲れるんです! パチンコに興味ないんです! なんであんなもの流すんですか? むしろパチンコ屋開店前の行列にいる「ああいう」人たちが登場するどうしようもない映像が見てみたい! 外人にとっては面白いカルチャーなので、もしかしたらカンヌで賞取れるかもしれないですよ? カンヌはアートにまぶす暴力とエロが好きなので実際に行けるかも? 日本の地方の国道沿いのあのどうしようもない荒廃した景色はパチンコ屋のCMにピッタリではないだろうか? 現在世界的に優れた作品では必ずああいうどうしようもない風景が出てくるし。誤解しないでいただきたいのは決してパチンコ屋を悪く言っているわけではありません。パチンコはパチンコと自覚してくれないかなと。だから、あのプロレスラーが出てくるCMも嫌いは嫌いだけど、地域貢献プロパガンダよりはダメージが小さいです。他者のために頑張ってる自己アピールってスゴい下品では?
*
…あれ? えーと何の話してましたっけ? ああ、とりあえずこの作品はオススメです! 誰かと一緒に安心して見に行けます。

地元シネコンでは老若男女で客席が六割程度埋まり(いつもガラガラなことが多いので、これはスゴい)、笑いが客席からバンバン飛び出して、非常に受けていた。これは松本人志映画では見られなかった現象だ(あの時、『大日本人』を上映する劇場は「あれ…笑いに来たのに全然笑えない…」という困惑の空気が場を漂っていた。そして、作品を重ねるごとに更に悪くなっていくとは…)。最初映画が始まる前は若い女の子たちや、オバサンたち、オジーチャンたち、オバーチャンたちが茶の間みたいな感覚で普通にオシャベリしまくっているので、ワイルドだなあ…(タクシードライバー状態のシネフィルではないので、おれはそんなことでは怒らない)と思っていると、ドッカンドッカン要所要所で笑って反応がとても良いので一緒に見ていて非常に楽しかった。
実際、安定して笑えるシーンが多く楽しめる。この感じは60~70年代の日本の純粋娯楽映画を見ている感覚に近いかも(時事問題を絡めた批評性のある笑いも往年の東映映画などを思い起こさせる)。それほど才気走った斬新なお笑いではないのだけれど、ワハハハハと安定して笑えるあの安心感。『みんな~やってるか!』では無かった笑いだ。『みんな~やってるか!』は当時、友達にたけしの映画はすごいんだよとノーガキ垂れて一緒に見て、大変気まずくなったのを覚えている。花くまゆうさくさんの映画評論集「青いオトコの汁」によれば、あの作品は何度も見返すごとに発見があり、面白くなっていくようだ。これは他の北野作品でも見られる特徴なので、いつか再見したいと思いながら、未だ果たせずにいる。
『ソナチネ」までの作品に散りばめられたブチキレまくった先鋭的なギャグシーンは(『みんな~やってるか!』はおれが未熟で理解できなかったので判断は保留で)、『キッズ・リターン』以降の作品では鳴りを潜め、キレの悪いギャグシーン(妙に間延びした編集)が続いたが、それらよりも『龍三と七人の子分たち』はテンポが早くなっており、安心して笑える。
この雰囲気のコメディ映画だと人は死なないだろうなあと思っていると、ヒドく残酷な形で訪れる死もある。そして、その死も次のギャグシーンに活かす秀逸さ。ラインを踏み越えないでちゃんとセーブする当たりが貫禄だ。こういう職人ぽさは好き。散々踏み越えてきた人だけが出せる境地。ちょっと違うかもしれないけど、デビッド・クローネンバーグの出し惜しみ感も大人の貫禄で好き。
『キッズ・リターン』の妙に居心地の良さそうな中華屋や居酒屋のシーンは何度見ても面白いシーンだけど、今回の作品では蕎麦屋に焼き鳥屋に居酒屋にと、あの独特の北野食堂ワールドが楽しめる。あの雰囲気いいよなあ。あれは一体何なのだろうか? 何度見ても飽きない。

座頭市を愛してるんだなあ…。

主人公たちと対立する関東連合ならぬ京阪連合という半グレ集団がいまいちキャラクターとして、掘り下げられていないのが残念。服装含めてヤクザとどう違うの?としか思えない。なんか構成員の年齢も幅が広すぎて半グレに見えない。この辺は振り込め詐欺集団をテーマとするノンフィクション作家の鈴木大介にでも取材すればよかったのではないだろうか。この無法地帯FC2ブログを運営している連中も半グレなので、そいつらのナリを見て参考にしても良かったかも。

コメディとはいえ、暴力描写は相変わらずで、近藤正臣が半グレの奴らをためらわずに刺すシーンは流石。そうなんだよね、人ぶっ刺したり、撃ったりするときは問答無用だよね(『ブルーリベンジ』は猛省するように)。この辺は高倉健(北九州出身)も身体に刻んでいて、今回のこの作品で出てくれてたら最高だったと…。内田裕也さんも出て欲しかったなあ(お名前の言及はある)…。
地元のシネコンでは映画の前に必ずパチンコ屋のCMというか社会貢献プロパガンダ映像みたいのが流れて、こちらのHPを100から20くらい毎回奪ってくれるのだが、今回もヒドいのが上映されていて、パチンコに入ったリクルートスーツの新人がパチンコは「そういう」イメージではないみたいなゴミクズ映像なのだけれど、『龍三と七人の子分たち』の最初のシーンがクズたちがパチンコ屋でもめるシーンだったので、偶然の皮肉に受けまくった。パチンコはパチンコだろうが、なーにが、「地域貢献」だ? 治安悪くしてんだろコラ。 尼崎の監禁鬼ババアも手下をパチンコ屋でスカウトしてたんだぞ? 自覚しろや。 つーかまあパチンコ屋はいいとしても、映画の前にあのCMはやめてください。お願いします! とても疲れるんです! パチンコに興味ないんです! なんであんなもの流すんですか? むしろパチンコ屋開店前の行列にいる「ああいう」人たちが登場するどうしようもない映像が見てみたい! 外人にとっては面白いカルチャーなので、もしかしたらカンヌで賞取れるかもしれないですよ? カンヌはアートにまぶす暴力とエロが好きなので実際に行けるかも? 日本の地方の国道沿いのあのどうしようもない荒廃した景色はパチンコ屋のCMにピッタリではないだろうか? 現在世界的に優れた作品では必ずああいうどうしようもない風景が出てくるし。誤解しないでいただきたいのは決してパチンコ屋を悪く言っているわけではありません。パチンコはパチンコと自覚してくれないかなと。だから、あのプロレスラーが出てくるCMも嫌いは嫌いだけど、地域貢献プロパガンダよりはダメージが小さいです。他者のために頑張ってる自己アピールってスゴい下品では?
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…あれ? えーと何の話してましたっけ? ああ、とりあえずこの作品はオススメです! 誰かと一緒に安心して見に行けます。
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